吉田工場長の部屋
(月刊ジャーマンカーズ2006年2月号掲載)


ん?タイヤが変だぞ?

皆さんこんにちは。

最近はうちの長男が星に興味を持ったとか何とかで
先日も星空観測会とかに出かけてまいりまして、
肉眼でオリオン座を見つけたまではいいとして、
先生が持ってきたという屈折型天体望遠鏡で土星を見たとかいう話には
ちょっと私も興奮しました。

何気に私も天体モノは結構昔から好きなほうで、
私が高校生の頃にハリウッドでン億円の費用をかけて製作された天文学者、
故カール・セーガン博士の「コスモス」という番組が大好きで、
全13話を毎週楽しみに見ていたんですが
当時ビデオデッキを持っていなかった私はその番組を保存する手段がなく、
そのまんま思い残す事数十年・・・ある日その事をふっと思い出しまして、
今や何でもDVD化する時代、もしやと思い調べてみると、
やっぱりhttp://www.carlsagan.com/で販売しておりまして、
つたない英語を駆使して発注したところ、
こっちの時間で金曜日にオーダーしたら翌週月曜に届く驚きの迅速さ。

価格も13話7枚組みで15000円くらいだったと思います。
おもしろいのはこれが単なる天文学ばかりの話ではなく、
何で平家ガニは生き残ったのか?
といった人類が他の生き物の進化に介入した話などが紹介されていて、
天文学は人類学であり、他の星を研究することは地球を知る事だという
博士の持論は何やら説得力がありました。
日本のロケット技術も軌道に乗ってきたようですし、
今後の宇宙開発にはちょっと期待出来そうですね。

さて本題に入る前に、実は皆さんにお詫びしないといけない事があるんです。

それは、先日紹介したATF完全交換計画なんですけど、実を言うと
ATオイルチェンジャーを使用することが出来ない機種があるんです。
えぇーっ!それはZFの5HP30というV8 4Lエンジンに搭載された
トランスミッション(写真1)

で、こいつはオイルクーラーがトランスミッションに抱きついていて、
エンジンのLLCがここに引き込まれるタイプ(写真2)
つまりATFはこのオイルクーラーの内部を通過する構造なので、
ATオイルラインが外部に露出してない為にチェンジャーを繋げる事が
出来ないんです。ゴメンナサイ。

この機種は従来どおりのオイルパン脱着による洗浄だけしか出来ないので
ご容赦下さい。他の機種は今のところOKだと思うのですが、
ATF交換の際は一度お問い合わせの上ご来店下さいね。

さてお待たせしました、本題に入りましょうか。

今回のお題はM5ツーリングです(写真3)
この車、日本には正規に輸入されていないので
この車は必然的に並行輸入ということになります。

ツーリングとは言ってもセダンベースで作られているので内容はほぼ同一。
エンジンも全く同じ(写真4)
で、一番の違いは外見という感じ(写真5)
さて、この車に一体何があったんでしょう?

この車はマニュアルトランスミッションですが、クラッチミートをするたびに
「ドンっ」っていう大きな音がするんです。
まるで床をおもいっきり叩かれている感じの音です。
こういう車は駆動系に大きなトラブルを抱えている場合が非常に多いんです。
それはこの車がM5という極めて高いパフォーマンスを持つ車なので
あらゆる場所において非常に負荷のかかる種類のものであることはもちろん、
M5という車格から非常にブッ飛ばすユーザーも多いと考えられるからです。

早速見てみましょう。

クラッチミートの瞬間にドン!という音からすると、
加速の瞬間に何かが動いてしまっている可能性があります。
加速時に駆動するものはエンジン、トランスミッション、プロペラシャフト、
ディファレンシャル、それとデフを支えているリアアクスルです。
一番怪しいのはやはりリアアクスルでしょう。
なぜかというと、リアアクスルはデフを固定するだけではなく
タイヤの回転力を吸収したりしながらサスペンションもがっちり
支えなければいけないので意外に重労働を強いられているのです。

試しにガレージジャッキを当ててみましょう(写真6)

ジャッキでリアアクスルを持ち上げてみて、ヘンな動きがないか調べます。
アクスルを固定している所は3箇所。
一見何でもないかに見えたアクスルのブッシュですが(写真7)
持ち上げてみると、見事にがたがたといっていほどの
隙間が出来ていました(写真8)
こうなってはもうアクスルを外してブッシュ交換をするより他はありません。
まずリアマフラーを外します(写真9)
そして触媒も抜いてプロペラシャフトも外します(写真10)
そしてサスペンションアームに留まっているショックアブソーバーを
外して(写真11)アクスルとボディの接点を全て絶ちます。

写真にはありませんが、この他ブレーキラインを切り離したり、
リア車高調整の油圧回路を切り離したり、
サイドブレーキワイヤーを外したりと結構手間がかかっています。

そんなこんなで全て外したらいよいよジャッキをアクスルにあてがって
慎重に少しづつ下ろしていきます(写真12)
無事に下ろすことが出来たら(写真13)車の下からゆっくりと引き出します。
とはいってもヒジョーに重たいのでタイヤを取り付けてから
引きずり出します(写真14)

外してびっくり!ブッシュの芯が外れてしまっていました(写真15)
このアクスルはもはや固定されていない状態で運転されていたようです。

これから更に分解を進めていって全てのブッシュを打ちかえるのですが、
時間がなくなってしまったので本日はこの辺で。

私が購入した「コスモス」のDVDは、何も苦労してわけ分からん英語を
駆使しなくても現在はAmazonとかで簡単に手に入るみたいですヨ。
今は本当に便利な時代になりましたよねぇ・・・

それでは、また。

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