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僕は自分の血をしぼって
ペリカン鳥のようにあなたに捧げた。
ところであなたはその恩返しに僕にくれた、
癪の種と悲しさとを。
〜ハインリッヒ・ハイネ〜
僕は自分の給料をしぼって
キャバクラ通いのようにあなたに捧げた。
ところであなたはその恩返しに僕にくれた、
トラブルの種と疲労とを。
〜ヨシダ・マサノブ〜
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皆さんこんにちは。
いつもの書き出しにもそろそろ飽きてきたので
今日はちょっと趣向を変えてみました。
大奮発してサスキットを組み込み、18インチのアルミホイールでキメたはずなのに
まっすぐ走らない車が出来てしまった・・・
なんて時のオーナーの心境ってこんなとこではないでしょうか?
その疲労を癒してくれるのはカノジョの笑顔かはたまた女房のお財布か、
いやまてそれはそもそもオレが稼いだカネではないかなどと
アバレルまえに一度ご来店ください。
事前にチェックして癪の種と悲しさを取り除きましょう。
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さて、今回のお題目は4ヴァルブDOHC1800CC直列4気筒、
M42B18型エンジンを使ってヴァルブタイミング調整をやってみましょう。
カムシャフト駆動をゴムのベルトから金属のチェーンに変えることによって
現在のBMWはベルト切れのトラブルから開放されましたが、
金属チェーンでも伸びてしまうことは避けられません。
そのことをよく知っているBMWのエンジンはちゃんと調整範囲を設けていて、
定期的に調整することによっていつまでも美しいフィーリングを
維持できるようになっています。
では早速作業に取り掛かりましょう。
まず、プラグコードを取り除いてヘッドカバーを丸裸にしたら(写真1)
ヘッドカバーを取り外してみましょう(写真2)美しいですね。
美しく廻るエンジンはメカニズムも美しいですね。
この状態で1番シリンダーのカム山が等しく内側に向くよう
クランクシャフトを回してセットしておきます。
次にクランクシャフトを回らないように1番シリンダーが
圧縮上死点にある状態で固定ツールを使って固定します(写真3)
そしてカムシャフトの後ろ側に専用ツールをあてがって
カムシャフトの角度が正常かどうかチェックします(写真4)
このエンジンは全く問題がないようです。
ではまたヘッドカバーを取り付けましょうか、
ではつまらないのでちょっとイタズラしちゃいましょう。
そもそもヴァルブタイミングとは何でしょうか?
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ガソリンエンジンはインテークヴァルブから混合気を吸入して
それを圧縮、点火爆発のエネルギーによって膨張、
エグゾーストヴァルブから排気、という動作を繰り返していますが、
上死点(ピストンが一番上にある状態)ぴったりでヴァルブが開いたり
下死点ピストンが一番下にある状態)ぴったりで閉じたりしてるわけではありません。
地球上にあるさまざまなものは万有引力によって支えられ
重量があることによって空中を飛散することなく地上にしっかりととどまっていられます。
地球上に空気が存在するのは空気にも重量があり、
万有引力によって地球上に引きつけられているからです。
重量物には必ず慣性というものが存在しており、
例えばタバコの煙を口から噴き出した後、何の力も加えられず
全く風のない状態においても吹いた方向に煙が流れ続けるのは
煙という重量物に慣性力が働いているからです。
自転車のペダルを漕いで加速してしまえば、後はペダルを漕がなくても
自然に自転車が走ってくれるのも同じリクツです。
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この慣性をうまく利用すれば、ピストンが下がりきった後でも
混合気は慣性によってシリンダー内により多く入っていくことができるので
ピストンが下がりきってまた上がり始めるところまでインテークヴァルブを
開いておけば混合気がたっぷりと充填できます。
エンジンのパワーはいかに多くの空気をエンジンに通過させるかで
決まってしまうのでより多くの空気を充填したほうがいい、というわけです。
通常ヴァルブタイミングはエンジンの排気量やインテークマニホールドの
長さなどによって決められており、あまりにも長い間ヴァルブを開いておくと
せっかく充填した混合気がまたインテークマニホールドに逃げてしまうので
アイドリングも落ち着いて中低速もある程度トルクを出して、
高回転でもそこそこ、というセッティングになっていますが、
ヴァルブを早めに閉じれば中低速のトルクが太くなり、遅めに閉じれば
高回転でパンチのあるエンジンになりますから、ヴァルブタイミングによって
ある程度そのエンジンの性格を変えることが出来るんです。
というわけでこのエンジンは高回転向けにちょっと遅閉じにしてしまいます(写真5)
このように専用ツールの外側がちょっと浮くくらいに調整してあげることで
ヴァルブを遅閉じにすることが出来ます。
高回転型のエンジンに仕上げたら火花も高回転まで追従できるように
ハイパワースパークプラグに変えてあげましょう(写真6)
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アタシは毛皮のコートを着たり宝石を身体に巻きつけるよりも、
アナタのそばにいてアタシの話を聞いてほしいのヨ、というわけではありませんが、
毎日何の問題もなく走ってくれる愛車は、時にそのありがたみを
ついつい忘れてしまい、エンジンの語りかけを聞き逃してしまいがちですが、
ほんの少し手を加えてあげるとお話も楽しくなるというものです。
エンジンと対話、していますか?
それではまた。
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