吉田工場長の部屋
(月刊ジャーマンカーズ2006年4月号掲載)

ん?タイヤが変だぞ?

皆さんこんにちは。

最近寒暖の差が激しくて身体に堪えますね。
私は例によってかる〜い胃腸炎にかかってしまい、
それとどういう関連があるかはナゾですが娘が突然風邪をこじらせて
毎晩高熱にうなされ真夜中にたたき起こされる毎日、
ついには女房殿にまで感染ってしまい長男を除くほぼ全員が
何がしかの不調を訴えるというちょっとした緊急事態に・・・

夜中に39度の高熱に苦しむ娘に、昼間の診察時に頂いた
解熱の為の座薬をお医者さんの指示に従って投与し
(夜中に解熱剤を使うタイミングっていつも判断に迷います)
同じく高熱の女房殿には慣れない手つきで玉子酒をこしらえ、
座薬をイヤがってビービー泣きまくる娘が寝静まったところで
私はお風呂につかり、残り湯でお洗濯。
ムダに元気な長男には日中の食器洗いと乾いた洗濯物の
収納を担当させて、とまぁこんな感じで何とか危機を乗り切りました。

玉子酒なんて初めて作っちゃいましたよ。砂糖をちょこっと入れるとか、
卵はあまりかき混ぜるとうまみが逃げるからホドホドに、
などなど予備知識は辛うじてあったためそれほど製作に
戸惑いはありませんでしたが、こういう時に限って卵の在庫が
1個しかなかったり(日本酒は晩酌用のが潤沢にあったりする)
してアセりました。皆さんも卵の在庫管理には注意しましょう、
じゃなくて健康管理には注意しましょう。


さて、話は変わって工場のほうはというと、
おかげさまでATF交換の必要性が浸透したせいか、
週3台くらいのATF交換を行うようにまでなりました。
以前お話したと思いますが、ATFの抜き取り作業は
1晩かけてゆっくり行います。

この日はE36 318iのGM製4速ATのオイル交換をしましたが、
試しにATオイルパンを外して(写真1)

オイルを全て抜き取り、そのまま再びオイルパンを取り付け、
一晩放置してみました。結果はご覧のとおり(写真2)

こんなにオイルが出てきてました。
特にドレンボルトがない小さいほうのオイルパンには
たっぷりと溜まっており(写真3)
一晩かけてじっくり抜き取る事の重要性を再認識させる結果となりました。
また、オイルパンを外して清掃するのも重要です。
オイルパン内部の鉄粉除去用の磁石もたんまり
鉄粉が溜まっていますし(写真4)

ドレンボルトのないほうは底に汚れが堆積しています(写真5)
我々がATF交換をする際に決していきなりチェンジャーを使わず、
オイルパン清掃から始めるのはこういった汚れをチェンジャーだけで
除去するのは不可能であり、それでいて見逃すのが危険なポイント
であるという理由によるものです。
ですから、ATF交換は必ずお預かりしての作業となりますので
何卒ご理解下さい。

で、これはほんの前フリでして(笑)
今日の本題はV8エンジンのM60です。
540や740などが比較的購入しやすい価格帯になってきたせいか
最近V8を見る機会が多くなってきましたが、
それなりに年月が経過していますから、いろいろと出る時期でもあります。
さっそく見てみましょう。

車はE34 540iです。もう製造から10年を超え、
一通りのトラブルを経験したと思われるこの車はそれなりに
様々なパーツも交換され、コンディションも安定する時期なのですが
どうもこの車、冷間時のアイドリングが落ち着かず、
温まってもちょっとラフアイドル気味。
エンジンの故障メモリーも「O2コントロールの異常」と出てきます。

確かに冷間時はO2制御が異常な値を示しますが、
この車は温まると正常な制御に戻ってしまいます。
普通、O2センサーが壊れるとエンジンが温まっても
制御異常が続くはずなのでこりゃあおかしいですヨ。
しかしながら、この、まるでメカチューンエンジンのようなアイドリング・・・
もしやヴァルブタイミングの狂いでは?

そう、このV8エンジンは左右バンクのインテークカムを
1本のタイミングチェーンで駆動しているので、
なが〜いタイミングチェーンがほんの少しでも伸びると
チェーンが長いだけに盛大な狂い方をしてしまうんですネ。
しかも左右で狂い方も異なってしまうのでアイドリングが
目茶苦茶になる可能性もありますからこれは是非確認してみなければ。

まず、クランクシャフトを規定位置で固定してカムシャフトに
特殊工具をあてがってみると、もう見事な狂いっぷりでした(写真6)
左右の特殊工具がほぼ平行にならなくてはいけないのに、
まるでずっこけてしまっていますね。

これではアイドリングが安定しなくて当たり前です。

ではどうやって直しましょうか?タイミングチェーンの交換?
いえいえ、そこまでしなくとも大丈夫です。
このエンジンはカムスプロケットに調整範囲があり、
チェーンの伸びに応じて再調整が出来るようになっていますから、
カムスプロケットのボルトを緩め(写真7)
2つの特殊工具がほぼ平行になるよう再調整したのち(写真8)
ボルトを締めなおせばおしまいです、

と書くのは簡単なのですが、
これを右と左でやるのだから結構大変な作業です(写真9)
こうして無事タイミングが決まったV8エンジンは
大変お行儀のよいアイドリングを取り戻しました。

今までいろいろとやってきたがどうもいまいち
アイドリングの振れが止まらない、
という方は是非ヴァルブタイミングの再調整をお勧めします。

まぁそんなわけで深夜に洗濯機をぐぉんぐぉん回しながら
(マンションではないので騒音苦情の心配はありません)
玉子酒のあまり酒で晩酌をしながら原稿を進める、
そんなある日の私でした。いやぁ健康は宝物ですなぁ。

それでは、また。

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